絵巻物で読む伊勢物語 |
HOME|ブログ本館|日本語と日本文化|日本の美術|万葉集|美術批評|東京を描く|プロフィール|掲示板 |
伊勢物語は今も多くの日本人に愛されている。九世紀の半ばごろに成立したこの古い歌物語は、二十一世紀に生きる日本人の心にも訴えかけるものを持っているからだろう。かくいう筆者も、少年時代にこの物語に感激して以来、還暦を過ぎた今でも、時折繙いては読んでいるところである。最近は、単に物語の本文に接するばかりではなく、絵巻物になったものを、絵物語として鑑賞するようにもなった。 伊勢物語はすでに平安時代の末頃までには絵巻物にされたと推測されている。現存する最古のものは、鎌倉時代(13世紀後半)に成立したものである(現在は久保惣美術館所蔵)。これは、物語の一部に対応するものが残っているにすぎない。物語のすべてに対応するものとしては、徳川時代初期の寛文二年(1663)に作られた住吉如慶本と呼ばれるものがある。これは住吉派の開祖住吉如慶が絵を描き、愛宕通福が詞を書いた。底本には藤原定家の写本を用いているらしく、125段すべての本分と、66段分の絵からなる。 伊勢物語は、本文を読むだけでもつきせぬ味わいがある。なにしろ日本最古の歌物語として、あの紫式部も霊感を受けたと思われるものだ。日本文学の最大の伝統として色好みの男女の恋を描くというものがあるが、伊勢物語はその伝統の出発点にあるといってよい作品だ。我々現代の日本人も、伊勢物語を読むことによって、男は男女の駆け引きを学ぶことができるし、女は男に愛される秘訣を体得することができるはずだ。それほど伊勢物語は、日本人の感性に溶け込んでいるのだ。 そんな伊勢物語を、絵物語の形で読んだら、どんなに楽しいかしれない。そこでこのサイトでは、絵巻物を通じて伊勢物語の世界を耽溺したいと思う。そのよすがとしては、上述した住吉本を用いることにする。 鑑賞するにあたっては、まず、本文及びその現代語訳を載せ、文章の解説及び絵の解説を記し、参考のために付記を加えた。絵は東京国立博物館のサイトからダウンロードしたものを使い、詞書は岩波文庫版(大津有一校注による天福本系統の写本)を底本とした。 |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2014 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |