絵巻物で読む 伊勢物語
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伊勢物語絵巻九七段(四十の賀)




むかし、堀河のおほいまうちぎみと申すいまそがりけり。四十の賀、九条の家にてせられける日、中将なりける翁、
  桜花散りかひ曇れ老いらくの来むといふなる道まがふがに

(文の現代語訳)
昔、堀河の大臣と申すお方がいらっしゃった。その方の四十歳の賀が、九条の家で催された日に、近衛の中将であった翁が次のように読んだ。
  桜の花が散りしきり空を曇らせて欲しい、老いがやってくるという道がわからなくなるように

(文の解説)
●堀河のおほいまうちぎみ:堀河の大臣、藤原基経のこと、「おほいまうちぎみ」は「大き前つ君」の音便、●いまそがりけり:いらっしゃった、●四十の賀:四十歳になったお祝い:藤原基経が四十歳になったのは貞観17年、●散りかひ曇れ:散り乱れて曇れ、●老いらく:年をとること、老いること、●来むといふ:やって来るとかいう、●道まがふがに:道がわからなくなるように、

(絵の解説)
四十の賀の集いを描いたもの、背中を見せているのが中将の翁で、桜を振り返りながら歌を読んでいる、

(付記)
この段は、中将なりける翁を在原業平と言い換えて、ほぼそのままの形で「古今集」に載っている。基経の四十の賀が行なわれた貞観17年には、業平は五十一歳になっており、官位は近衛中将であった。







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