絵巻物で読む 伊勢物語
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伊勢物語絵巻百十七段(住吉行幸)




むかし、帝、住吉に行幸したまひけり。
  われ見ても久しくなりぬ住吉のきしの姫松いくよ経ぬらむ
おほん神、げぎやうしたまひて、
  むつましと君はしら浪みづがきの久しき世よりいはひそめてき

(文の現代語訳)
昔、天皇が住吉に行幸なされた。その時におつくりになった歌。
  私が以前見て以来久しくなった、その住吉の岸の姫松はどのくらいの世を経たのであろうか
すると住吉の神が姿を現しになって、次のように歌われた。 
  わたしがあなたをむつましく思っているのを、あなたはご存じないでしょうが、久しい昔からあなたを祝福してきたのですよ

(文の解説)
●帝:どの天皇かは不詳、●住吉:大阪住吉神社のあるところ、古くは「すみのえ」と呼んだようである、●おほん神:神社の神体、げぎやう:現形、姿を現すこと、●むつまし:親しい、●しら浪、白波と知らないをかけている、●みずがきの:「久しき」の枕詞、

(絵の解説)
住吉神社に帝の一行が行幸する様子を描く

(付記)
古今集に詠み人知らずとして、「住吉の岸の姫松人ならばいく世か経しと言はましものを」とあり、この段はこの古歌を踏まえた創作だろうと考えられている。







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