絵巻物で読む 伊勢物語
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伊勢物語絵巻百六段(龍田河)




むかし、をとこ、親王たちの逍遥したまふ所にまうでて、龍田河のほとりにて、
  ちはやぶる神代も聞かず龍田河からくれなゐに水くくるとは

(文の現代語訳)
昔、ある男が、親王たちのそぞろ歩きをして楽しんでおられるところに参上して、紅葉の名所龍田側の畔で次のような歌を読んだ。
  ちはやぶる神代にもこんなことがあったとは聞いておりません、この川の水を唐紅色に括り染めにしたとは

(文の解説)
●逍遥:そぞろ歩き、●龍田河:大和の国を流れる生駒川の上流、紅葉の名所、●ちはやぶる:神の枕詞、●からくれなゐ:唐より到来の紅の染料、●くくる:括り染めにする、しぼり染めにする

(絵の解説)
鮮やかな紅葉が降り敷く龍田川のほとりをそぞろ歩きする人々

(付記)
紅葉が色鮮やかに川面を埋めたさまを、川の水が唐紅にくくり染めにされたと、洒落て歌っているのであろう。この歌は、古今集にも、二条の后のもとの屏風絵に書かれた龍田川を題にして、業平朝臣が歌ったということにされている。







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