絵巻物で読む 伊勢物語 |
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むかし、男、和泉の国へいきけり。住吉の郡、住吉の里、住吉の浜をゆくに、いとおもしろければ、おりゐつつゆく。ある人、住吉の浜とよめ、といふ。 雁鳴きて菊の花さく秋はあれど春のうみべにすみよしのはま とよめりければ、みな人々よまずなりにけり。 (文の現代語訳) 昔、ある男が和泉の国に行った。住吉の郡、住吉の里、住吉の浜をゆくに、たいそう景色がよく面白いので、馬から降りて休みつつ進んだ。ある人が、住吉の浜を入れて歌を読めというので、(男が) 雁が鳴いて菊の花咲く秋もよいが、春の海辺のここ住吉も住みたくなるくらいにいいものだ と読んだところ、ほかの人々は皆読まなくなってしまった。 (文の解説) ●住吉:この地は摂津の国にある、和泉の国に向かう途中に通りすぎたのであろう、●おりゐつつ:馬から降りて立ちどまりつつ、●秋はあれど:秋もすばらしいけれど、●すみよしのはま:住吉の浜と住み良しの浜をかけた、 (絵の解説) 大勢の男たちが住吉の浜を行く場面、右手の鳥居は住吉神社だろう (付記) 住吉神社は海の神をまつる所として、昔から信仰されてきた。また、住吉の浜は風光明媚なところとして知られている。前の二つの段とともに、一種の名所めぐりの体裁になっている段だ。 |
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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2014-2015 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |